一般的に呼ばれる「ピル」とは、「低用量ピル」という女性ホルモン剤です。
女性ホルモンを外部から身体に取り入れることで、脳へ排卵に必要なホルモンが十分に存在すると勘違いさせることができます。ピルは、このように女性ホルモンの分泌を抑え、排卵が起こらないようにするものです。
少し前までは「ピルの使用=避妊目的」という考えが多くありました。現在は避妊の他に、生理痛の軽減やニキビの改善などが目的で使用することも増えています。
ここでは、ピルの基本情報、使用のメリットデメリット、注意点をご紹介します。
正しい情報を取り入れて、自分の身体に寄り添った方法を知り、上手に取り入れてみてくださいね。
ピルとは
私たちが一般的に使う「ピル」は、エストロゲンとプロゲステロンと呼ばれる、2種類の女性ホルモン様成分が配合された薬です。
女性ホルモンを外から補うことで、体内のホルモン濃度が上がります。すると、女性ホルモンが排卵に必要な量を確保されている、と脳が誤解して体内では分泌量が抑えられます。その結果、卵胞の成熟が抑制され、卵胞刺激ホルモンと黄体形成ホルモンの分泌も抑えられ、排卵が起こらなくなります。
この作用を利用して、避妊効果を得たり、生理周期を整えたりします。
ピルの種類と効果効能
薬に含まれるエストロゲン(卵胞ホルモン)の容量の違いにより、「超低用量ピル」「低用量ピル」「中用量ピル」に分けられます。別枠として、「アフターピル」が存在します。
それぞれの種類と使用用途、効果について詳しく説明します。
超低用量ピル
超低用量ピルは、エストロゲンの量が0.03mgより少ない薬です。
主に、「月経困難症」「子宮内膜症」の治療目的で使用され、保険が適用されます。
避妊効果については、対象試験が日本で行われていない種類もあるので、かかりつけの医師へお問合せください。
低用量ピル
低用量ピルは、エストロゲンの量が0.03〜0.05mgより少ない薬です。最も広く知られている薬で、主に「避妊目的」で使用されています。「経口避妊薬」とも呼ばれ、毎日決まった時間に正しく服用すると、99.7%ほどの避妊効果が期待できます。
さらに、避妊効果だけでなく、生理周期の安定化や生理痛の改善、肌荒れの改善など、副効用が実感できることもあります。
中用量ピル
中用量ピルは、低用量ピルよりもエストロゲンが多く配合されている薬です。多くは、「生理不順」「過多月経」「月経困難症」などの治療のために使用されます。
エストロゲンの量が多いため効果も高く、イベントなどのために生理日を変えたいといった際にも使われます。
一方で、低用量ピルよりも副作用が強く出る恐れもあります。服用前に症状を理解しておくと良いでしょう。
アフターピル
アフターピルは、緊急避妊薬として効果を発揮します。前述の3種類のピルとは違い、黄体ホルモンが主成分となる薬です。性交後72時間以内に服用すると、約84%の妊娠が回避されます。
アフターピルを服用すると、排卵が抑制され5〜7日程度遅らせることができます。72時間以内とはいうものの、望まない妊娠を避けるためには、少しでも早く服用する必要があります。
また、アフターピルの処方は医師の処方箋を得る必要があります。アフターピルは保険適用外の薬で、10,000円前後とかなり高額です。対応できる薬局も少ないため、必要になった場合には、受診する婦人科などにあらかじめ問い合わせておくと困らずに済みそうです。
ピルのメリット

ピルの服用にはさまざまなメリットがあり、使用目的によって使い分けもできます。
<主なメリット>
・避妊効果
・生理に関するトラブルの改善
・ニキビの改善
・女性特有疾患の予防
それぞれ詳しく説明します。
避妊効果
ピルを正しく服用すると排卵が抑えられるため、99.7%と高い避妊効果をもたらします。
生理に関するトラブルの改善
生理不順や過多月経、生理前のイライラ(PMS)、月経周期の安定など、生理に関するトラブルの改善が期待できます。
生理痛の原因となる子宮内膜が厚くならず、痛みの元となる物質が作られなくなるため、月経量や痛みは減少する傾向があります。
ニキビの改善
ニキビの原因のひとつは、男性ホルモンによる皮脂の過剰分泌や、女性ホルモンが安定しないことです。
低用量ピルを服用することで、男性ホルモンの活性化を抑えられ、ホルモンバランスも整うためニキビの改善が期待できます。
女性特有の疾患予防
子宮内膜症や卵巣がん、子宮体がん、その他婦人科系のがんなどの病気予防につながります。
例えば子宮内膜症は、症状のコントロールや病状進行の予防という意味でも、ピルの使用が勧められています。
ピルのデメリット
ピルにはエストロゲンが含まれるため、服用の際に気をつけておくべき点もあります。
飲み始めは、体がホルモンバランスの変化に慣れていないことで、副作用が強く出てしまう場合が多いという特徴があります。主な副作用は、不正出血や吐き気、頭痛、むくみ、乳房の腫れ、体重増加などです。
低用量ピルを服用する場合だと、
- 不正出血は12%の頻度
- 吐き気、体重増加、気分の変調、乳房の腫れ、頭痛などは5%程度
の割合で副作用が発生するというデータがあります。(参考:望まない妊娠を繰り返さないために)
症状が出た場合には、個人の判断で服用を止めるのではなく医師に相談しましょう。ピルは、服用期間が長くなるにつれてホルモンバランスが整います。したがって、飲み始めてからおよそ3ヵ月もすれば、だんだんと副作用が落ち着く場合が多いです。
数週間服用しても副作用の症状が改善されない場合や、ひどくなってきた場合には、薬との相性が合っていない可能性も考えられます。その旨を、医師へ相談してみてください。
ピルには種類があるため、自分の体に合う薬を見つけ、継続することが大切です。
ピルの使用で注意すべき点

ピルの使用で注意する点がいくつかあります。
- 飲み忘れた時の対処法
- 血栓症
これらを詳しく解説していきます。
飲み忘れた時の対処法
ピルは、「1日1錠決まった時間に服用する」という、厳しいルールがあります。
薬を飲む習慣がなかったので忘れてしまう人、自宅に忘れて旅行や出張に行ってしまった人など、飲み忘れてしまう理由は様々あります。
もしも服用を忘れた場合にはリカバリー方法がありますので、頭の片隅に入れておくと役立つでしょう。
飲み忘れて経過した時間 | 対処法 |
---|---|
24時間以内 | その時点で1錠 |
24時間~48時間以内 | その時点で2錠 |
48時間以上 | その時点で2錠 |
偽薬かそうでないかによっても飲み方は変わるため、詳しくは医師へご相談することをおすすめします。
ピルは、服用時刻も重要なポイントです。お薬手帳などにメモをしておくと忘れてしまっても見返すことができ、医師への確認が容易にできます。
血栓症
ピルを服用するうえで、最も重篤な副作用が「血栓症」です。
血栓症とは、血液中にできた血栓により血管がふさがれることで、臓器障害を引き起こす病気です。
以下の生活習慣や持病があると、血栓症のリスクはさらに高まります。
- 喫煙
- 高血圧
- 心臓病
- 脳卒中
- 片頭痛
- 糖尿病
しかし、定期的な診察や検査を行うことで、安心して服用できます。
検査をしていても急激に以下のような症状が出た場合には、放置しないでください。
- 手足のしびれ
- 押しつぶされそうな胸の痛み
- 息苦しさ
- 激しい頭痛
これらの症状には、「血栓症」の疑いがあります。服用を中止し、速やかにかかりつけ医へ相談してください。
まとめ
一般的に「ピル」と呼ばれるものは、低用量ピルを指しています。
避妊目的や生理に関するトラブル、ニキビの改善、女性特有疾患の予防などが、ピル服用のメリットです。一方で、非常にまれではありますが、副作用の発生や血栓症に常に気を付ける必要があるなど、デメリットも存在します。
ピルの服用を正しく理解したうえで使用し、メリットを上手に取り入れた生活を過ごしてみてはいかがでしょうか。
